はじめに
私は、研究や、日常でも「分類」したい性分で、分類することにかなりの時間を割いているといってもよい。「分類」に、何か方法論はあるのか、一般化できるのか、独自に考えてみることにした。
1. 分類の目的
1-1. 探しやすくなる
1-2. 比較しやすくなる
1-3. 分類が必要な場合に限る
数が少ない、対象物が目立つ、常にそこにある、もう一度探す可能性が低い、一時的に保管するが、永久ではない、といった場合に、分類の必要はない。
2. 分類の例
身の回りの分類対象を考えてみる。
2-1.物質
文房具、工具・日用品、書籍、研究論文、金融関係書類、契約書類、説明書類、実験サンプル。
2-2.データ
ブログの分類、デジカメ写真、ワード文書、実験データ、申請書、研究論文。
2-2.概念
なんかよくわからないが、考え方とか、捉え方みたいなもの。よいと悪い、とか。哲学みたいなやつ。
どうやら、実際の物質とデータ、概念に区別できた。以後は、現実的な物資とデータを中心に考える。
3. 分類の手法
次は、分類の方法をまとめてみる。
3-1. シンプルな分類(一次元的)
分類フォルダ、クリアーファイル、引き出し、収納スペース。
3-2. 階層化した分類(階層的?)
フォルダの中にさらにフォルダがあるような分類。
3-3. タテとヨコで探せるようなやつ(二次元的)
例えば、ユニクロのズボン売り場で、タテの並びはデニムの色違いで、ヨコはサイズ違いとか、ホームセンターで、タテの並びはボルト・ナット・ワッシャーで、ヨコは寸法(M4、M5等)とか。
3-4. 多次元的な分類(数次元的)
データベース等。住所録管理ソフト等のカードは、あいうえお順や、都道府県別等、様々な分類で出力できる。
多くは、シンプルな分類しかできない。書類などは、階層化できる。
4. 分類分けの成立
どのような条件で、分類分けができるのか。
4-1. 1つの分類に、複数の分類対象が属する
4-2. 分類対象内で、重複しない(排他)
4-3. すべての分類対象を設定した分類に収めることができる(網羅)
4-4. 分類同士は等しい価値を持つ(等価)
4-5. 分類名から分類対象を想像できる
4-6. 分類数は、適度に多すぎない
4-7. 場合により、分類の最大数は制約される
4-8. 場合により、分類のサイズは制約される
4-9. 後の変化や増加に耐えうる柔軟性がある
4-10.メンテナンスが容易である
なんとなく、上のようなことを考えて分類している気がする。
5. 分類の問題
分類ではどんな問題が起こるか。
5-1. 分類分けに関すること
① どうも、うまく分けることができない
② どの分類にも属さない対象ができてしまう
③ 逆に複数の分類に属する対象がある
④ 分類の関係が並列ではない
⑤ 結果的に分類が多すぎる
5-2. 分類分けを設定して、実際に分類した後
① 特定の分類が肥大化し、収まらない
② 設定したのに、あまり属さない分類が出てくる
5-3. 分類後の問題
① 分類したのに、どこにあるかわからない
② 追加したいが、収まらない
③ 新たな分類が必要となった
④ 対象の一部が陳腐化した
⑤ 別の分類体系ができて、重複する
⑥ 何か方法が面倒で、継続できない
最初に行う分類分けと、その後の取り扱いで問題がおこりやすい。
6. 分類対象を分類分けする
A. 複製できるかどうか (一箇所にしか置けないのか)
B. 大きさの概念があるか
C. 定期的に増えたり、消費するかどうか
D. 規格化されたサイズか、ランダムか
7. 分類方法を分類分けする
A. 分類の大きさに関すること
A-1. 1分類の大きさがは完全に固定
A-2. 大きさの概念はあるが、可変である
A-3. 大きさの概念はない
B. 階層化に関すること
B-1. 階層化できない
B-2. 限定的に階層化できる
B-3. 無限に階層化できる
C. 拡張性に関すること
C-1. 拡張できない
C-2. 何かを追加することで拡張できる
C-3. 基本的に制限はない
8. 分類分けを分類する(複雑だなぁ)
A. 分類の厳格性
A-1. 対象を完全に区別でき、排他的である(男・女とか)
A-2. 現状では区別できるが、追加もありうる
A-3. 網羅はしているが、排他性が低い
A-4. あいまいである
B. 分け方の数に関すること
B-1. 数は3~7くらいで、増えることはない
B-2. 数は現状3~7くらいだが、増えることがある
B-3. 7以上で、今後も増えるかもしれない
B-4. 7以上だが、分け方は増えない
C. 階層化に関すること
C-1. 階層構造はない
C-2. 2次元までの階層だが、これより深くはならない
C-3. 現状は2次元の階層だが、深くなるかも
C-4. もっと複雑
9. 最適な分類分けの選択
9-1. 排他・網羅性
全体を網羅でき、排他性が高いものを選択する。網羅性を重視すると分類名はあいまいなものになり、探しにくくなる。排他性を重視すると、探しやすいが、制約がある場合、分類しにくくなる。分類数が限定される場合で重複する可能性がある場合は、網羅性を優先する。逆に、分類数に制約がない場合、排他性を優先する。
9-2. 制約条件
分類の数や、大きさの制約を考える。もし1分類が肥大化するときは、分離する。逆に、1分類が小さい場合は、似た分類との統合を考える。ただし、1分類が小さくても、今後増える見込みがあるときは、そのままにしておく。
9-3. 拡張性
今後増える可能性がある対象に対して、限定的な分類をしてはならない。逐次増やせるような工夫をする。例えば、年度別に階層化する等。ただし、過度に拡張性を意識して、分類を増やすひつようはない。
9-4. 例外・雑多なもの
設定した分類に収まらない雑多なものは、無理やりどこかに入れてしまうか、「その他」等、一時保管場所を設ける。この保管場所は定期的に検討し、この中で新たな分類項目が成立するなら、そうする。
9-5. 簡便性
方法が複雑になると、継続しにくくなる。いちいち順番に並べるとか、面倒なことは選択しない。投げ込むような方法を選択する。
9-6. 頻度
めったに参照しないような対象は、最低限の分類でよい。年度ごとなど。
10. 分類の実際
① すべてを網羅するように決めたのに、どれにも属さないやつが出てきた
安易にどこかに紛れ込ませるのではなく、一時的に「その他」に保管し、後でもう一度考える。
② 排他的にしたのに、複数の分類に重複するやつが出てきた
優先順位を決めて、どちらかに分ける。よりわかやすいように、分類名を工夫する。重複しそうな分類は近接して配置する。
③ サイズの制約があり、収まらない、またはスカスカ
何かの基準をもって、2つの分離する。全体の分類数に制約がある場合は、どこかを統合して数を作る。逆に分類したのに、あまり入らないときは、統合や、多い部分の分離を考える。
11. 分類のメンテナンス
① ある分類が増加して、収まらなくなった
古いものを捨てるか、分類を分けるか、階層化する。定期的に増える場合は年度ごとに分ける。
② どの分類にも属さない「その他」が増えた
新たな分類を作るか、全体を見直す。
③ ある分類が陳腐化した、いまいち使っていない分類がある
思い切って破棄したり、分け方を見直す。
12. 分類の7ステップ
STEP 1 : 制約条件を考える
大きさはあるのか、階層化できるか、拡張できるか、分類の数は限定されているのか。
STEP 2 : 分類対象を考える
大きさの概念があるのか、形は揃っているのか
STEP 3 : 今後のことを考える
増える可能性があるのか、一定か
STEP 4 : 分け方をいくつか想定する
STEP 5 : 想定した中から、最適な分類法を選択する
STEP 6 : 実際に分類する
STEP 7 : 分類をメンテナンスする
13. 経験的な分類のコツ
① 雑貨
「その他」が増えやすい。常に大き目の「その他」スペースを設ける。また、不要なものを捨てる。
② 紙媒体の書類
段階的に分類する。まず、数枚の場合、ラベル分けしたクリアーファイルに収める。これが多くなると、穴をあけるなどして、ファイリングする。さらに多くなると、分類を細分化するか、年度ごとに分ける。古い年度のものは破棄する。他、2つ折にした紙にはさむとか、輪ゴムでとめとくとか、そんなんでもよい。
③ データ
基本的には、ソフトウェアやファイルの種類で分ける。もしくは時系列、行事ごとなど。後で内容がわかるように、ファイル名に気をつける。
14. まとめ
分類の問題は、分ける際の排他性と網羅性、さらに分類上の制約や拡張性にあることがわかった。対立する要素がある中で、なんとか妥協して分ける必要がある。一方で、その対象を本当に分類して保管するべきか、時間をかける必要があるのか、考えるべきである。分類自体が目的となってはならない一方で、分類によって何か新たな知見が得られる場面もある気がする。